べートーヴェンの美しい二つの第二楽章が最後のシーンに効果的に使われている。
現エリザベス女王の父ジョージ六世は厳しい父親の影響で吃音に悩まされていた。
兄の王位返上に伴い、王位を継承するが、公式な場でのスピーチに自信が持てない。
そこで、民間の言語療法士(ライオネル)を雇い二人三脚で吃音を克服するための
訓練を始める。
二人の丁々発止の涙ぐましい訓練の日々が始まるが、時局はヒトラーがヨーロッパ
を席捲、イギリスにも戦火が迫る中、国王は国民に対し、国家存亡の危機を訴える
スピーチをすることになる。
全く自信など持てないまま、国民向け放送のマイクの前に立ちスピーチが始まる。
そのシーンのバックに流れるのは、ワグナーが「不滅のアレグレット」と呼んだ
交響曲第七番第二楽章が静かにおごそかに流れる中、国王は見事にスピーチを
やり遂げるのだ。
http://youtube.com/watch?v=AHY2UzOonig
そして、待ち受けるチェンバレン首相、チャーチル等の重臣達、王妃、少女時代の
現エリザベス女王やマーガレット王女たちの賛辞を受けるシーンのバックには、
優しさに満ちた、心洗われるようなピアノ協奏曲第五番「皇帝」第二楽章が
流れていく中、ファミリーと共に宮殿前に集まった聴衆に応えるべく、バルコニー
に立つのだ。そして、「ジョージ六世は侵略に対する抵抗運動の象徴となり、
ライオネルとバーティ(国王)は生涯にわたりよき友だった」とのコメントで
締めくくられる。
http://youtube.com/watch?v=3oFmeT1RVQs
この映画は、コリン・ファースの主演男優賞のほか、作品賞、監督賞、脚本賞の
アカデミー賞四部門を獲得している。
ペーチン