「船ぬ親」は「うーねぬやー」と読む。「船ぬ親」とは、本来は船頭の意であるが、
かっての王府時代、御用布の織り子たちを管理する責任者を「船ぬ親」「船勢頭」
と呼んでいたのでここではこれを指していると思われる。
この歌は、船ぬ親の青年と、その幼なじみで許嫁の娘との婚約から結婚、
男の浮気による離別、独り身の寂しさ、かっての恋人への思慕、その後の
妻の一途で献身的な愛で、男の愛情を再び取り戻すまでのラブストーリーである。
この歌は、本声(ふんぐい)、中声(なかんぐい)、裏声(うらんぐい)の
三部で構成されているが、声域による分類ではなく、一番から二十三番にも
及ぶ長い叙事詩のため、旋律に面白さ、楽しさの音楽的工夫が凝らされ、ユンタ
ジラバの最高峰に君臨している。
一部の本声は、ゆったりとした重厚な格調高い旋律で歌われているが、その超絶的な
歌唱を楽譜に表現する事が困難で、大工先生の「工工四楽集」には記載されていない。
二部・三部の中声と裏声は、軽快で賑やかな旋律で、男女交互に掛け合いで歌われ、
「サッサ!」「ユイサ!」の掛け声が小気味よく、農作業も、楽しくはかどったに
違いない。
ペーチン