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鎌倉芳太郎が見た八重山文化~芸大文化講座より(最終回)

鎌倉芳太郎
香川県出身、東京美術学校(現東京芸大)卒、染色家、型絵染人間国宝。
沖縄文化史研究の傍ら、首里城再建に尽力。

・沖縄県女子師範学校・第一高等女学校教諭時代に2年に亘り
琉球芸術調査を行う。

・東京美術学校助教授、新潟大学講師

・石垣市名誉市民

・「沖縄文化の遺宝」出版、「伊波普猷賞」受賞

八重山文化の調査
1923年芳太郎25歳、感受性豊かな新進気鋭の芸術家が、初めて八重山の
文化に触れて感動する様子がノートにぎっしり記録されている。

方言・民謡調査、観音堂詣での人々の観察
「若い娘と老婦人四人連れが、堂内を清掃して供物を捧げ、合掌して一心に
祈っている。私は眩しい物を見たやうで、その生命に触れた喜びで心は疾風の
やうに走った。この人たちの素朴だけれどシンプルな美しさ、崇高な気韻、
口からは優れた歌を歌い、太古のやうな言葉を話す。万葉の世界が現にここに
生きている。八重山人の純真さ、敬虔な信仰に基づく精神性を感ぜずには
いられない。」

桃林寺権現堂の調査 

「私の眼前にそれは現はれた。古代建築の出現に胸は高鳴り、感激の陣太鼓が
鳴り響いた。その建築様式、美しい彫刻、神殿を飾る絵画、それはレムブラントの
赤暗色の燦然たる明暗の美であり、そのモチーフの純真なる、遠く鎌倉期の仁王様
にも凌駕するであらう。否、私の直観には推古期なる法隆寺の大門を連想せしめた。
そしてそれは恰も王殿カラファーフの縮図のやうで、四カ字の聖域となっていた。

ああ、八重山よ、あの可憐で優美な八重山よ、この八重山にまだ誰も知らなかった
美しい物を発見した。この心臓のどよめき、私は感動に打ち震えている。」

八重山文化の特性

・ナッダッサカイシャーン
「ナッダッサカイシャーン」とは 穏和である、おとなしく美しい、しとやかという
意味である。

・八重山人の精神的支柱である村々の御嶽とその神司、神々への豊穣祈願とその感謝の
奉納に由来する歌と踊り、その特徴は何よりも、清らかさ、優しさ、なだらかさ、静けさ
であり、さらに海も空も青く澄み渡り、山々は緑に萌えて、夜ともなれば銀河が流れ、
星座が煌く、この八重山の自然、穏やかでつましいけれど、なかなか懐のゆかしい
八重山人の気質、このような薫り高い八重山の人々によって伝統・文化は培われてきた。

ペーチン