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「八重山の神話・伝説・昔話」~芸大文化講座より

神話とは
自然、社会現象などを神々や英雄を通して説く伝承的な説話を言い、
根拠はないが絶対的なものとして信じられている。一定の儀礼を
繰り返すことにより、呪術的な効果が期待される。

伝説とは
古くから語り継がれてきた、かっては事実として信じられてきた話。

① 災害復興伝説
明和の大津波で大災害を被った船浮部落に現れた女と慶来慶田城という
豪傑に村は救われるのだが、女は消えていなくなってしまう。人々は
その女の人は人間ではなく、神だったとして、御嶽を造り拝むようになった。

② 鍛冶伝説
大浜部落にヒルマクイ・幸地玉ガネという兄弟がいた。鉄製の鋤、鍬、鎌を
求めて薩州坊泊へ行き、それらを得て帰る道すがら、白髪の老人に会う。
そしてその老人の導きで鞴(ふいご)を持たされ、無事、崎原泊へたどり着いた。
兄弟は感謝の意を示すべく、崎原御嶽を造った。

③ 女神の招聘
西表島のチルイリャーガマの上流に神々が座るカンピラーという石があり、神々が
集まって会議をしている。「西表島には女の神様がいないので大和から女の神様を
騙してつれてこよう。」ということになって、赤勾玉と綾粒・ビル粒を土産に連れて
きたのだが、女神は赤勾玉を見てこれは偽物だと言って帰ろうとするが、ほかの
神々の懸命な要請に、女神は宇那利崎の神様になることを承諾した。この女神は
同性の女を嫌うので部落の女性は宇那利崎御嶽に参ることはできないそうである。

④ アカマタ神の由来伝承(西表古見)
昔、古見部落に夫婦が住んでいたが、一向に子供ができなかったので、日夜御嶽に
参詣し子供ができるよう祈願し続けた結果ついに男の子が誕生し、立派に成長して
いった。ところがある晩、その子が突然いなくなってしまってどこを探しても
見つからず両親は泣く泣く諦めていた。
ところが、ある年、例の御嶽にその子が現れ、その年は豊作となった。その後も
その子が現れる年は決まって豊作となるので、村人たちはその子の姿を型取った
仮面扮装の神を作り、部落内を徘徊させて、豊年を祈願したということである。

⑤ ムヌン(物忌み)の由来伝承
昔、アーレ―という男が夜釣りをしていると、船が入ってきて船の入り口を聞いてきた。
「あんたは何者だ?」と聞くと、私は海から来た世果報の神で、農作物の豊作、凶作は
自分次第だと言う。アーレ―が水路を教えてやると、お礼として「お前の畑にサン
(ススキを結んだもの)を立てておきなさい、そうすれば病害虫が入らないから」
と言う。それを聞いて男は急いで村へ帰り、村人と共にすべての畑にサンを立て
畑を病虫害から守った。それ以来、竹富では村中でムヌンの行事を行うように
なったということである。

これら神話・伝説の根底にあるのは、五穀豊穣・豊漁祈願・災厄除け・無病息災
など自然への畏敬の念と祈りを具現化することにあると思われる。

ペーチン