1、うちなーぐちとは
「うちなーぐち」とは、沖縄口、つまり沖縄の言葉を言う。
ここで言う沖縄口は、沖縄本島界隈で使われる言葉を言い
両先島を含めた琉球諸方言とは限定的に使われている。
琉球諸方言
琉球諸方言は次のように分類される。
一 北琉球方言群・・・ 奄美語、国頭語、沖縄語
二 南琉球方言群・・・ 宮古語、八重山語、与那国語
これら6言語は、国連のユネスコで、消滅の危機に瀕する言語
いわゆる「危機言語」として指定し、保存・継承への取り組みを
促している。
2、「うちなーぐち」の音韻
① 合拗音
小さくて可愛らしいものにつける。イングワー (犬小)、マヤーグワー(猫小)
② 声門閉鎖音
いったん喉の部分を緊張させて呼気を閉鎖させ、その喉の緊張を一気に
解いて破裂させることによって生ずる音声。ウワー(豚)、イヤー(お前)。
この発音は、本土の人たちにとって難しいらしくワー、ヤ―と発音して
しまうが、ワーは(私の)、ヤ―は(家)で意味が違ってくる。
③ 形態音韻変化
名詞に助詞が付くと音韻変化する。
キラマヤ ミーユシガ マチギヤ ミーラン(慶良間は見えるがまつ毛は見えない)
キラマー マチゲー
④ アクセントによる区別
●花が白い ハナヌ シルサン(平板)
●鼻が白い ハナヌ シルサン(ハにアクセント)
●木が生えている キーヌ ミートーン(平板)
●毛が生えている キーヌ ミートーン(キにアクセント)
3、「うちなーぐち」の文法構造
① 係り結びの法則
日本語古語における、係助詞ぞ、なむ、や、か、こそ(沖縄語ではドウ、カ)
を受ける終止形は言い切りではなく、連体形や未然形で結ぶ。
●ワンネー デークニビケージドゥ カマビタル(連体形結び)
(私は大根ばかりを食べました)
●ジューニンメーヌ クトゥガ ヤイビーラ(推量形結び)
(10年前の事でしょうか)
② 未然形条件形
未然形+ばの後ろにくる文は、命令形や疑問形、勧誘形が来る。
●ミーヌ イラー クビ ヲゥーリリ
(実が豊かに入っているなら、首を深く折りなさい)
(実るほど頭を垂るる稲穂かな)
●ティーヌ ンジラー イジ フィキ イジヌ ンジラー ティー フィキ
(手が出るなら怒りを引き、怒りが出るなら手を引きなさい)
4、「うちなーぐち」の敬語構造
① 尊敬語
●ユムン(読む)
シンシーガ スムチ ユミミシェーン(先生が書物お読みになる)
●チューン(来る)
シンシーガ メンシェーン(先生がいらっしゃる)
② 謙譲語
●シラスン(知らせる)
ワンネー シンシーンカイ ウシラシ サビタン(私は先生にお知らせしました)
●イユン(言う)
ワンネー シンシーンカイ ウンヌキヤビタン(私は先生に申し上げました)
③ 丁寧語
動詞に ~アビーン、~イビーンを付ける、「です」はヤイビーン、デービル
●ユムン(読む) ワラユン(笑う) ヤン(~である)
ユマビーン(読みます) ワライビーン(笑います) ヤイビーン(です)
デービル(~でございます)
5、「うちなーぐち」の文語的表現
歌詞などの文語的表現では音韻変化は生じない。
●ティンサグヌ ハナヤ → ハナーにはならない
●ウヤヌ ユシグトゥヤ → ユシグトーにはならない
6、「うちなーぐち」の再生に向けて
うちなーぐちは、曾ては、皇民化政策の下、国家による撲滅運動の憂き目に
あって、消滅の危機に瀕したこともあったが、民俗学者等の擁護、学術的
価値、県民のアイデンティティ確立への自覚から、戦後はその保存、継承
が活発化している。
ペーチン